「いらなくなったコンピューター」だけでは足りない。
『港区赤坂四畳半社長 二足歩行ロボットの未来とMac編』
「カネはいかにして地球を救うのか」
http://blog.livedoor.jp/shi3z/archives/30954765.html
を読んでの、色々な感想。
http://d.hatena.ne.jp/workshop/20050818#p9
「北朝鮮・平壌のエリート児童は楽しそうに小天才で遊んでいました」
のコメント欄でのid:hallyさんの指摘もあったんだけど、
PCの世界は、他の機械のジャンルと違い、「枯れてない」故に
エミュレータで遊ぶことのできるPCというと100MHzが最低ラインとなりますが、
これはまた発展途上国で実用に耐えるぎりぎりのラインでもあって、
それ以下のマシンは、たとえばニジェールあたりでも
輸送コスト以下の価格で中古を入手できるそうです。
今後は中国芯のローエンドPCなども幅を利かせてくるでしょうから、
Pentium2〜3級のマシンが最低ラインになってくる日も近いでしょうね。
(id:hally)
スローコンピューティングは発想としてはいいのですが、
e-wasteの観点から問題が出てきそうですね。
アフリカをハイテクごみ箱にするなという警告はすでによく聞かれるところで、
ある程度物持ちするマシンを用意しないと後が大変です。
(id:hally)
ハードスペックの進歩が他ジャンルに比べてどうしようもなく早いので
先進国で「いらなくなったコンピューター」で可能な作業には
ある程度の限界が出てきます。
これはプログラミングを行う側(人間)の限界ではなくて機材の性能の問題です。
言ってみれば、ファミコンで「リッジレーサー」を作れないのと同じ*1w。
特に、途上国の場合、「電源問題」が大きな律速仕事になる可能性が高いので
消費電力当たりの計算量や、メンテナンスによる問題*2を考えると、
古いコンピューターを騙し騙しで使って貰うよりは、
比較的新しい省電力PCをしっかり使って貰う方が
トータルで見ると安くつく可能性がある*3。
あと、私が考えているのは、
ひょっとしたら今のコンピュータープログラミングに求められる最大のセンスと
数十年後のコンピュータープログラミングに求められる最大のセンスは、
ひょっとしたら同じ物ではないかもしれないということ。
ほんの十数年で、こういうことが起こってしまう業界ですし、僕らが担当した初期の携帯コンテンツのプログラムは
全てC++とインラインアセンブリで書いていました。
だからこそ秋葉原で買って来たような安い自作PCであっても、
秒あたり60アクセスを捌ききることができたのです。
もちろん安定性のことなどを加味して今はさすがにC++は使っていませんが、
それでもJavaでコードを書く時ですら、上記のようなことは
意識の根底には流れているのです。
しかし同時にそれは僕が歳を取ったということかもしれない、と思いました。
今のトレンドは、いかに高速にプログラムを動かすか、ではなくて、
いかに手軽にメンテナンス性の良いプログラムを書くか、ということにシフトしています。
最適化のために必要なコスト(人件費)とハードウエアのコストを比較して、
より効率的な方を採用するという考え方です。
とにかく高速なプログラムを書くと言う要求は、
最前線のゲーム開発の現場ですら忘れられつつあります。
だから、確かにふつうにサーバーのプログラムをしている限りは、
パイプラインなんか意識しなくてもちゃんと動くのです。
携帯電話のプログラミングは一時期まで、
こうした古い世代の考え方が支配的でした。
CPUが非力で、メモリも潤沢にはなかったからです。
しかしいずれ確実にそれが忘れ去られる瞬間がやってきます。
若きプログラマに怒鳴った時、僕は意識の裏側で自分は老いてしまったな、
と思ったのです。
http://blog.livedoor.jp/shi3z/archives/30199209.html
港区赤坂四畳半社長 二足歩行ロボットの未来とMac編:老いを感じた瞬間
現役プログラマーとしての寿命もそれほど長い業界ではありません*4から、
若い頃に「それなりのハードウェア」で学習するってのは、プログラミングの
思考パターンをある種の「ハードの枠」にはめてしまうという危うさも持っているわけです*5。
コンピューターが無い場所に、新しくコンピューターを手渡す。
ゼロから1へのステップアップというのは、とてつもない力を持っています。
ひょっとしたら、才能ある使い手が、"コンピューター先進国"の私達が
「古いコンピューター」のしがらみに色々囚われているのをスルーして、
今では全く予想も付かない発想の新しいアイデア・言語文法を
生み出してくれるかもしれません。
だからこそ、「いらなくなったコンピューター」を送るなんてアイデアだけではなく、
旧来のしがらみを超えられる「全く新しい発想・最先端のデザイン」の
素晴らしいコンピューターを送って、そういう場所にいる才人*6たちに
「頭を下げてお願いしてでも、使い勝手を試して貰い・アドバイス・アイデアを拝聴する」。
そのくらいの気持ちで、このプロジェクトに挑む必要があるのではないかと考えます。
(けど、この程度の発想では、たぶん、数年後にマイクロソフトかAppleが
類似のことを「高いクオリティ」で仕掛けるだろうから
…もっと色々できることを考えなくちゃ。)