映画「アバター3D」観てきた。いろいろいいところも問題点もわかった。

http://movies.foxjapan.com/avatar/
映画「アバター」オフィシャルサイト
 
 TOHOシネマズの年賀状割引で、1300円*1で観賞してきました。
http://www.tohotheater.jp/campaign/campaign00000086.html
TOHOシネマズお年玉プレゼントキャペーン
 映画館は、ららぽーと船橋のTOHOシネマズ、
 
 席は真ん中ちょっと前の席。
チケット販売所では、前の席だと3D酔いで酔うかも知れませんよと言われましたが、
映画では「視界の隅」までスクリーンでないと没入感がうすいので警告無視。
結局、最後まで自分は気分が悪くなることはありませんでしたが…
3Dメガネ苦手な人は、やはり後ろ側の席の方が良さそうです。
 
 ストーリーは、よくあるボーイミーツガールで、
ボーイがちょっと頭悪い直情系で、ガールがかなり頭いい現地民という設定。
正直、人物ドラマとか必要ないくらいストーリーはわかりやすいです。
自分は、字幕で観賞したのですが、字幕ほとんど読まずに大丈夫でした。
むしろ、この映画、字幕ジャマで、吹き替えの方がいいかもしれません。
 
 映像表現は、見事!今の3D映画で有効に表現できるシーンをほとんどすべて使ってます。
広角レンズで撮られた事務所内の閉所空間をはじめ、
円形と近景が混ざった飛行シーン、水面の下の人物のゆらぎを上から眺めるシーン、
奥行き感をたっぷりつかった樹中の居住区シーン、
様々な視界を遮るオブジェクトが出てくる密林シーン、
手前から奥までわらわらと人物が動くモブシーン、
SFでおなじみの「ホログラム透過映像」などなど、
今の液晶メガネ3Dで表現可能な「きわめてわかりやすい」3Dシーンばかり。
 
 
 立体感の制御で面白いなと思ったのは、奥行き感の使い方。
極端に飛び出てくるシーンは、ピンポイントで使われていて、
普段の映像はどちらかというと比較的自然に奥行き感を演出する感じ。
 
 多分、数分間の映像ならガンガン飛び出させるのでしょうが、
2時間以上の長丁場の映像だと、飛び出しから来る錯覚に目が持たないのでしょう。
周囲で観ていた女子高生集団は、映画終了後に目が痛いと言ってました。
 
 想定ピント面がスクリーンと合っている部分は比較的像がクリアなのですが、
ピント面から外れるに従って、3Dメガネの左右視差が強くなっていきます。
特に、「飛び出す」演出だと、飛び出す画面と、実際のスクリーン位置とのピントの差が
3D酔いをもたらす「違和感・フォーカスズレ」の原因のひとつになります。
 
 スクリーン面からの距離が長く取れるほど、
遠距離はパンフォーカス気味の人間の目だと
メガネ視差と実距離のからくるフォーカスのズレの錯覚が弱くなるので、
比較的視差の錯覚ズレによる酔いが少なくなります。
これが、視聴距離がとれる大画面TVほど、3D化で圧倒的に有利だと言われている理由のひとつ。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hot/20100113_341856.html
元麻布春男の週刊PCホットライン】 CES 2010で3D TVの今後を考える
 
 自分は「とびだせ大作戦」の赤青メガネ時代から擬似3D慣れしているので
かなり前の席で観賞しても問題なく大丈夫でしたが、
普段から3Dゲームで酔いやすい人や、過去に3D酔いした経験がある人は後ろの席をお勧めします。
 
 映画の絵作りでも、主要な単一シーンでは観客のフォーカス視野の「前後移動」が
頻繁にならないような「わかりやすい」絵作りを心がけていたみたいでした。
ピントによる観客の視線誘導もうまく、一本道なストーリー展開もあって、
画面全体を隅から隅まで注視するようなシーンはほとんどありません。
画面隅には重要情報はほとんどなくて、真ん中辺りだけ観ていて映画が成立するw。
 これだけカメラワークが先読みやすくて、わかりやすい映画だと、
多分2Dで観ていたら、あまりに単調でかなり眠くなります…。
 
 逆に、FPSのゲーム画面や写真を観賞するときのように、画面全体を隅々まで注視すると、
画面内の微妙な「アウトフォーカス」部分にピントがうまく合わなくて違和感が出てきます。
自分のように目をきょろきょろさせながら「あら探しする」見方をすると、
普通の観客だと違和感がいろいろ出て、しんどいはずです。
 
 
 
 映像表現で気になったのは、間接光の演出と、カメラや被写体が低速で移動するときの輪郭ボケ。
 
 アバターの舞台設定自体が原因なのか、CGのライティング計算の問題か、あるいは3Dメガネの性能なのか、
映画なのに、オブジェクトにあたるライティングが
ほとんど「砂漠みたいな強い直接光」っぽい印象がありました。
水の多いシーンや、ジャングルの中でも、光の回り方がなんか薄っぺらいというか、
間接光の計算がいろいろ足りない「妙にTVゲームっぽいw」感じのライティングのような感覚が。
 これは、液晶3Dメガネを通したときの光の損失が原因で、
細かい光線表現をスクリーン上で行ってもうまく視覚で再現できないから、
なら最初から細かく計算する必要ないだろうと、CG画像生成時に端折っているのかも知れません。
(アメリカ人の観客はそこまで気にしないだろうしw。)
 
 もうひとつの、微速度移動の時の輪郭ボケ、これは明らかに液晶3Dメガネのコマ数不足が原因です。
大画面液晶TVでの「コマ数不足」に伴う輪郭ボケが、3D映画でより強調される感じ。
 カメラがゆっくり動いたり、背後のオブジェクトが微妙に動いていくシーンで、
アウトフォーカスしている部分のボケと、微速度移動する動体の輪郭ボケが重なると、
かなり「アウトフォーカス部が汚いボケ味になる」印象を感じました。
 3D映画館のスクリーンが倍速や4倍速になるのはしばらく先でしょうから、
この部分がうまく解決されるまでは結構時間がかかりそうです。
 
 
 CG・特撮モノの表現は、液体や、メカや固いオブジェクト、発光体や爬虫類系の演出は見事です。
この辺も、今どきのFPS系TVゲームみたいな感じっていうのかなw。
 
 逆に、ある程度のマッスを持った柔らかい物体が
3Dでゆさゆさ動くシーンは極端に少なかったです。
 もっともっと具体的に言えば、自分が3DのSF映画で激しく期待していた
「たわわなおっぱいたゆんたゆん、むっちりおしりゆさゆさ」に相当するシーンは残念ながら無かった(泣)
 ラブシーンの演出も、中高校生が観ても問題ないレベルで…
この辺りの「たおやか」で「たわわで豊か」で「ぷるんぷるん」な3D表現は、
日本発の本格3D(おっぱい)映画が出てくるまではしばらく待ちになりそうです。
個人的にはひじょ〜に残念なことです(泣)。
 
 
 映画を見終わった後に感じたのは、
もしもFF(ファイナルファンタジー)の映画版が、今の最新技術で作られたら、
今回のアバター3Dみたいな感じになるのかなぁ…という印象でした。
ストーリーはほとんど後に残らない代わりに、強烈な視覚体験だけが残ります。
よくできた、遊園地やジョイポリスのライドが2時間以上続く感じ。
 
 現在の、3D映画表現のエッセンスはこれでもかと詰まっているので、
映像表現に関わる人なら、ぜひ一度体験されることをお勧めします。
逆に、映画にドラマ性やストーリーを求める人には全くお勧めしません。
 
 3D映像をたたひたすら視覚的に楽しむ目的にだけに「割り切られている」映画ですし、
そこまで3D演出に絞り込んで作らないと、現状では、3D映画だけでは
これだけの大ヒットを狙うのは難しいのかもしれません。
 

 

*1:1000円+3D料金300円