(ネタバレ注意)【新しい】カオス*ラウンジ【自然】の設営と撤収の模様を撮影しながら、今回の展示で気付いたことをメモしてみた。
梅ラボの巨大作品、紙の裏に粘着材が付いているので、こうなると復元は不可能。
ま、データがあれば何度でも複製は可能です…。
http://chaosxlounge.com/exhibition/781.html
http://chaosxlounge.com/atarashiishizen/
黒瀬陽平「『【新しい】カオス*ラウンジ【自然】』展解説ー新しいSHOWの形式」
http://aar.art-it.asia/u/admin_edit1/eRyZKvsl067uonULVwEh
ARTand ARCHITECTURE REVIEW
【新しい】カオス*ラウンジ【自然】、
12月3日の設営2日目と、12月21日・22日の撤収の模様を撮影しました。
12月3日の設営2日目の撮影画像はこちら
http://www.flickr.com/photos/workshop/sets/72157625539168501/
CHAOS*LOUNGE : THE NEW NATURE : Construction the 2nd day
12月21日・22日撤収の撮影画像はこちら
http://www.flickr.com/photos/workshop/sets/72157625538871929/
Chaos*Lounge "The new nature" Withdrawal days
この白い部屋の役割は大きく2つある。
限られた店舗面積に最大限の情報量を詰め込みながら、
単調にならぬよう質的変化に富んだ空間作りをし、
さらに順路を辿ることによって、観客それぞれ持っている美意識や価値観が一時的に機能不全を起こしてしまう
(例えば、店に入るまでは買うつもりがなかった商品をつい買ってしまう)ような空間のことである。
したがって、会場の中央に仮設した白い部屋には、
まずは空間の「抜け」を潰し、死角を増やし、
展示スペース全てを「通路」にしてしまうような役割を持たせている。
もうひとつの役割は、空間設計というよりは展示の演出に関わることである。
この部屋に入った観客はまず、部屋の外から漏れ聞こえてくる
映像の音声、DJの流す音楽、来場者や参加アーティストの話し声、物音に取り囲まれたような感覚になるだろう。
あるいは、寂れたショッピングモールのゲームセンターの騒音を壁越しに聞くようなシチュエーション。
この白い部屋の内側で実現したかったことは、
誰もいない、何もない、けれども、たくさんの人間の気配や痕跡が充満しているような空間である。
黒瀬陽平「『【新しい】カオス*ラウンジ【自然】』展解説ー新しいSHOWの形式」
http://aar.art-it.asia/u/admin_edit1/eRyZKvsl067uonULVwEh
初めてこの部屋を体験したときは度肝を抜かれました。
この部屋のアイデアが出てきた時点ですでにカオスラウンジの大勝利は決まっていたはず。
少し残念だったのは、白い幕を積極的に利用した展示が破滅クルーのプロジェクター投影だけだったこと。
扇風機や送風機、カラー投光器、レーザー、ステッカーや謎の光る液体など
カオス*ラウンジの作家達なら色々使いこなすアイデアを持っていたはずですし、
展示設営の時に内側からもっと上手くライティングを使うことができれば、
会場の光量配置を補えたかも知れません。
今回の展示で一番残念だったのは、
似非原さんの作品「段ボールハウス」が、設営時の予想ほど機能していなかったこと。
当初はカオスラウンジ会期直前に新宿でホームレス生活を体験していた似非原さんが、
会期中の昼間にここで「生活」すると予想していたのですが…
生活保護受給のために施設に入ったためなのか、
気が付くと段ボールハウスの設置場所は、誰もいない空き家か、あるいは物置状態に。
リビングデッドスペースというべきなのかなぁ…。
まあ、これはこれで、
管理人が諸般の事情で居なくなった個人サイトが
blogのコメント欄が故人を懐かしむ友人達のコメントや
業者の宣伝spamコメントで埋められているようで、
それはそれで独特の不気味さを出していました。
会場入り口に設置されていたwebカメラ。
上2つが会期開始前、下2つが会期終了後。
入り口は、会期中に荒川智則(小池陸(ssig33))さんの作品が追加されている。
設置当初は、webカメラは看板の文字の中に隠されていて、
会場内にはいると初めてカメラがあったことに気が付くという仕組みでしたが、
予想したほどうまく機能しなかったそうです。
会期中半〜終盤はカメラははっきり目立つ状態に変更されて、
カメラによる監視自体をエンターテイメント化する方向*1に変更されました。
監視カメラの露出・位置開示と、それに伴う監視のエンターテイメント化は、
一時期流行した監視カメラを利用したソーシャルハックな広報活動や、
イギリスで最近開始された「監視カメラ万引き発見コンテスト」にも繋がる傾向です。
http://www.barks.jp/news/?id=1000039910
The Get Out Clause : 貧乏バンド、監視カメラでPV制作 / BARKS ニュース
http://www.gpara.com/kaigainews/eanda/2009100801/
防犯カメラでゲーマーが街中を監視!? 批判も出ている英国の通報ゲーム
ゲーム情報ポータル:ジーパラドットコム
今回もうひとつ、非常に残念なことになったのは、山本悠さんの作品のひとつ。
「座り心地はやわらかくもなく硬くもなく、
触感も気持ち良くはなくしかし極端に悪くもない、
模様もアート作品のようでしかし美術作品ではないかも知れない、
長居していると色々モヤモヤした気分になれる敷物(仮称)」
うわぁ、これなにからなにまですげぇ微妙w、とにかく色々とモヤモヤする。(マットで寝ているのはすいづたくみ本人です)
http://twitter.com/yuuuuuuuuuuuuuu
http://yuuyamamoto.jp/
Yuu Yamamoto 山本悠
キッチンマットの滑り止め敷物をそのまま持ってきて、
黒瀬陽平さんが位置決めして置いただけという
やっつけ仕事にも程がある作品ですが、
独特のマーブル模様もあって、設営時点ではかなりいけていた作品でした。
説明付きでホワイトキューブで体験したら、かなりの効果があったと思います。
しかし、ここはカオス*ラウンジ。
居心地の微妙さを味わう山本悠さんの作品は、冬のだらだらまったり最強兵器「コタツ」によって完全に沈黙。
設営当初は会場入って右中央部(破滅プロジェクター脇)に置かれていたコタツが、
会期初日から山本悠さんの作品の真上に移動、しかも毛布付き。
例のマットのモヤモヤな居心地よりは、無制限の安楽さを提供するコタツの方がカオス*ラウンジ。
会期中にふと気が付くと、山本悠さんの微妙なマットは、
違和感を楽しむ作品としての存在感が失せて、
単なるコタツの敷物という本来の機能に戻ってしまっていました。
いや、これはこれで、まさに「尻に敷かれる」作品としていいのかもしれない…。
そもそも、会期終了後はコタツ周りはこんな状態になってしまっているので、
床面積をとってしまう床面平面作品は長時間生存困難だったかもしれません。
もうひとつ、今回の展示で気になったのは電源周り・照明周りの処理方法について。
これ、カオス*ラウンジとしてはさほど気にならないのですが、
次回の荒川智則個展では問題になるかも知れません。
店舗内のどこでもサインを設置できるように、
天井がすべて細い鉄格子になっているという徹底ぶりであった。(図7)
http://aar.art-it.asia/u/admin_edit1/Qe7Zw028qazIBCX6pYcT
http://aar.art-it.asia/u/admin_edit1/BTix4UDLp2vwSFy1kmu5
黒瀬陽平「『【新しい】カオス*ラウンジ【自然】』展解説ー新しいSHOWの形式
天井から垂れ下がるコンセントに注目!
家電量販店のサインボードやPOP使いの傾向としては
ここ最近の流行は、店内の天吊りPOPの量を減らし、
サインボードの視認性と店内見通しをスッキリさせることで、
お客さんの移動効率を改善してセルフ販売の効率向上を目指すというのが流行です。
特に、良くできた郊外型家電量販店では、人件費コストを少しでも減らすために、
店員さん無しでもお客さんをなるべく迷わせないというお店作りが徹底しています。
また、店内視認性の向上は、天井監視カメラや店員の立ち位置からの死角を減らすことで
盗難・万引きの対策に繋がるという大きな利点もあります。
(余談:
平日の郊外型家電量販店で、
しばしば「店員さんが私をずっと見ている…」と感じるのは、
店の棚配置の設計と店舗スタッフの立ち位置設定がそういう作りになっているからで、
大抵は、ひとりのお客さまをそこまで注視はしていません。
そもそも、店内に人手がやたら少なすぎるし。
最近は、平日の店内でお客さまが近くにいる場合は
お客様が監視されているように感じるという違和感を改善するために
スタッフが店舗メンテナンス作業している素振りをみせるように
スタッフを指導している店も多いですね。)
ところで、黒瀬陽平さんが注目した、この細い鉄格子天井。
サインボード取り付けが楽になるメリットの他に、
家電量販店のライフラインとなる電源周りの取り回し改善と露出回避、
そして、フロア模様替え時のライティングの自由度が格段に増す利点があります。
もう一度、引用元の図7をご覧ください。
天井からぶら下がっているはずのコンセント周りがさっぱり目立たないのと、
天井からのライティングがTVモニターの並び方に従って整然と行われています。
カオスラウンジ会場では、インターネットは無線になりましたが、
無限インターネットに必要な電源はまだ完全無線にはなっていません。
家電製品の広告では、基本的にコンセントの線は「隠すべきもの」として扱われています。
例えば、液晶TVやプラズマTV、ブルーレイレコーダーやパソコンの、
カタログの写真やCMで「コンセントの線がどこにあるのか」わかりますか?
家電便利グッズには、コンセントの存在感を減らすためのケーブルボックスという商品もあります。
BUFFALO ケーブルボックス 電源タップ&ケーブル収容 Lサイズ ホワイト BSTB01LWH
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コンセントの線やアンテナの線、そのほか様々な配線をうまいこと隠すためには、
壁際や柱などの目立たない場所から電源を引いてくる必要があります。
一般家屋では壁沿いを這わせたり天井際を利用したりすることが多く、
IT系のオフィス空間では浮き床の下にケーブルを這わせることが多いのですが…
家電量販店の場合は、柱や壁がないだだっぴろい空間にタイル床です。
これにお客様が常時移動する通路を組み合わせて、
そこに数百台のTVやレコーダーを展示して、
3ヶ月に1度ほど棚位置を少し動かす模様替えをするとしたら
大量の配線を通す場所はもう天井しかありません。
電源などの配線をさほど意識することがない普通の物販ショップでは、
天井は石膏ボードで覆われていることが多いのですが、
ここ最近できた家電量販店や物流系の倉庫などでは、
天井配線の設置・移動・撤収の利便性を低コストで(重要)改善するために、
ヨドバシカメラのような細い鉄格子天井が使われることが増えてきています。
来年、渋谷で開催される予定の荒川智則の個展では、
無料の無線LANと電源を求めて様々な人が集うであろうことが予測されます。
誰でも、気軽に使いやすい無限インターネット環境を提供するために、
大量の天吊りの電源や有線LANのさらなる提供が期待される所です。
結構見栄えも面白いですしw。
そして、細い鉄格子天井を使ったフロア模様替え時のライティングの自由度について。
家電量販店に限らず、物販を行う場所では、
商品のライティングの善し悪しは売れ行きに大きな影響を与えます。
例えば、ある商品ディスプレイの特定の場所が輝いて見えるだけで、購買訴求力はぐっとアップします。
(写真はイメージです。特に本文と関連性はありません)
例えば、フロアの模様替えで
「ここは蛍光灯設備を6本足す必要がある。ここはホームシアターなので気持ち暗めに変更」
となった場合、
通常の天井だと配線を引き直したり桟の場所を調べて取り付けなおしたり色々大変なのですが、
ヨドバシカメラのような細い鉄格子天井を使った場合は、
鉄格子の耐荷重と電源容量さえ確保できれば、他店よりもずっと簡単に・細かく照明の位置を変更できます。
照明位置の自由度が高いのは、店舗のフロア配置をスムーズに行う際にとても大きいメリットですし、
照明配置の限界に導線設計を左右されにくいので、より自由で店独自の導線設計が可能です。
うらやましいなぁ…(動かせない店舗照明に色々苦労させられた思い出が(泣。)。
店舗運営をする場合、照明設備の改善は初期投資がかさむものの、
一度やってしまえば維持コストはさほど高くなく、人件費もさほどかからず、
見栄えが一気にUPすることで商品の高級感が演出できる、
ぶっちゃけていえば、かなり費用対効果が高い「元がバッチリ取れる投資」です。
今回のカオス*ラウンジの展示では、
ギャラリーとして設計された高橋コレクション日比谷の中心部を白い幕で覆うことで
ギャラリーらしくない導線設計をつくるという試みはある程度成功しています、素晴らしい。
しかしながら、展示物をより良く魅せるための周辺設備の追加・調整が
今回のかなり無茶な導線変更の影響力に比べて色々と足りなかったため、
一部の作品がその魅力を活かしきれなかったところもあったのでは?と感じた部分もありました。
予算と設備(特に「ドンキホーテ的通路」内部とコタツ周辺に間接照明が欲しかったの)と、
設営内容の細かい微調整に使える時間がもう1日あれば、
展示としての完成度はもう2段階くらい上に行けたのではないかと思います。
そうすれば、カオス*ラウンジ的な空間に慣れ親しんでいない、
一般人向けのわかりやすさがもう少しほど向上したのでは?と感じました。
色々様々な制限があってここまで素晴らしい展示なのだから、
カオス*ラウンジがさらにリミッター解除して本気出せば…恐ろしいなぁ。
カオス*ラウンジが、高橋コレクション日比谷のような
巨大なギャラリーを使った展示を開始してから、まだ1年も経過していないんですよね。
これから色々とノウハウを積み重ねていけば、ぐっとすごい展示が出てくるのでしょう。
次回のカオス*ラウンジにも期待します。
*1:takano32さんと記念写真