「そのためにやるべきことは、特に前提知識がなくても、いつのまにか僕らの作法に従ってしまうような、うまいインタフェースを開発することである。」

http://blog.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp/nagao/archives/2007/03/3.html
長尾のブログ2.0: 次の3年間に向けて
 
 ニコニコ動画(α)の元になった
ビデオを対象としたアノテーション技術研究者のblog


たまたま学生がやる気を出してくれたおかげで、
また、もともとそれほど複雑なものではなかったため、
具体的なものができたのは比較的早かった。
しかし、その後がうまくいかなかった。
その学生は自分の作ったものに自信を持ったのか、
僕の意図とは異なるものを作り始めてしまった。
それ自体は別に悪いことではないが、
本来やるべきこと(つまり研究)がおろそかになってしまった。
やるべきことは、具体的なものができたら早めに公開して実証実験を開始して、
それを通じて知見を深めることだったのである。
これは、これまでの自分自身の反省も踏まえて、そうすべきだと思っている。
基礎研究ならともかく応用研究はユーザーの存在を無視して行うのは危険である。
(中略)
2に関しては、「ニコニコ動画」のような
自由すぎてとりとめのなくなったサイトが飽きられるようになり、
もっとまじめな作法にのっとった、
もっと役に立つ動画アノテーションが定着するとよいと思う。
そのためにやるべきことは、
特に前提知識がなくても、いつのまにか僕らの作法に従ってしまうような、
うまいインタフェースを開発することである。
それを作ると同時に、1の枠組みを利用して、
動画コンテンツの新たなエクスペリエンスを提供する。
 
関連リンク
http://blog.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp/nagao/archives/2007/03/_vs.html
長尾のブログ2.0: 集合知 VS 集合愚
 
 この辺り、おそらく長尾さんの研究者気質と、
この学生さんの研究者気質との違いなんだろうなぁ。
 

結局、Synvieにおいて、僕が提案して実装されたものは次のものである。
1.視聴のみの場合は必要ないが、
動画に何らかの情報を付与する場合は必ずログイン(ユーザー認証)すること。
2.動画のフレーム画像内の任意の領域に注釈が付けられること。
3.動画の任意の時間区間(シーン)を引用したブログが書けること。
 
Synvieの実証実験にあたって、
これらの仕組みを省略して公開すると言っていたので、断固反対した。
それでは公開する意味がないと思ったからだ
(「ニコニコ動画」がこれらの機能を持っていないにも関わらず、
非常に多くのユーザーを獲得している状況は、
僕にとっては皮肉としか言いようがない)。
 
 あと、ユビキタスエンターテイメントの清水さんの言う
集合「愚」って言い方はなんだか奇妙で気になった。
これ、おそらく言った本人は本気で「愚」だとは思ってないだろw。
(多分、長尾さんとは少し異なる思想・方法論によるの、
機械的な手法による何らかの「知」の抽出・整理方法を考えてるはず。)
 
 例えば、聞き取り調査やインタビューなんかでの話術。
 普段は、人の頭の中では発話されづらいもろもろ、
例えば暗黙知や「本人の中では確信が弱すぎて言い出しにくい情報」を、
システムの力によってコメントの形で引っぱり出すってのは、
相当ハイレベルな情報収集能力だったりする。
 
 これ、ノリのいい&上手いインタビューや対談だと
被インタビュー者や対談相手との間でしばしば起こることで、
このような経験を経ることで、ふと新しい気づきが起こってくる。
兆候や予感(のようなもの)を、文字情報の形で引き出すための
高度なシステムっていうのかな?
 
 ニコニコ動画の場合はそれが「空耳」に特化してる所はあるけどw。
 
長尾さんの定義した集合知

ここでいう集合知とは、
コンテンツの意味を機械的に扱うための、
体系化された知識の総体である。
 ニコニコ動画のコメントの敷居の低さってのは、
長尾さんが意図している知の生み出し方とは異なるし、
整序された知を生み出す環境としてはノイズまみれにせよ、
動画に関する"特定の"情報の抽出・送出方法としては極端に偏っていて面白い。
 例えば、特定シーンに置ける「コメントの弾幕」が
見ている人の興奮をここまで増幅するってのは予想もしなかった。
 
(情報元:
動画アノテーション集合知を目指すニコニコ動画のインスパイア元
http://slashdot.jp/article.pl?sid=07/03/26/0517258
)