「「相」が劇的に変わっていく」

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1060.html
松岡正剛の千夜千冊『生命を捉えなおす』清水博


 グローバルな状態をつくっている系には、いくつかの共通の性質がある。
そのひとつは非線形ということだが、
もうひとつは「相転移」をおこしているということである。
その系では「相」が劇的に変わっていく。
 
 たとえば氷と水と水蒸気は成分は同じでも、まったく異なる「相」をつくっている。
層状に流れていた雲がいつのまにかウロコ雲になっているのも、
水道の蛇口を少しずつあけていくと、水が糸状から急にねじり状になり、
さらに棒状になって、そのうえで突然にバッと開いていくのも、
「相」が変わったせいだった。
逆に、コーヒーにミルクを垂らしたばかりのときは
まだミルクをスプーンで引き上げることは不可能ではないかもしれないが、
これがいったん交ざってしまったらミルクは二度と引き上げられない。
こうした「相」の変化はあるところを境にして不連続におこる。劇的でもある。
それが相転移である。
 
(ばっさり中略)
 
 情報とは、
「右へ行くか左へ行くか」とか「AかBか」の決定をまだ判別しないでいる状態から、
その一つを選択して指定する状態に突き進んでいく動向を含んだものをいう。
粗視の状態から微視の状態へ進んでいくこと、そこに情報が関与する。
(中略)
 このように考えてみると、
生命活動は「情報をうまく発現できるような系」になっている
というふうにいうことができる。
情報の力は情報をやりとりすることの効果が有効に発現できるときに発揮される。
生命系はおそらくそのような情報が発現し、
それが動的秩序につながるようになるように自己組織化されたしくみなのである。