マッシュアップ(mash-up)と予想外の展開とマイヤヒーとかあと色々。

 
(注:チラシの裏です。)
 
http://amrita.s14.xrea.com/d/?date=20060123#p02
「ブログ嫌環流(環は「環境管理型権力」の環です)でマッシュアップを斬る」
 『圏外からのひとこと』のとても興味深いエントリーに便乗して。
 
 
http://japan.cnet.com/column/web20now/story/0,2000055302,20093879,00.htm
マッシュアップ--仮想空間と現実をつなぐ地図 - CNET Japan
 この中で使われている「マッシュアップ」という言葉の感触が
なんとなくお行儀のいい「ええかっこしいw」な解説なので、
音楽の状況に即して、もう少しディテールを含めて書いてみることに。


バスタードポップ、まだ定着しているジャンル用語ではありません。
僕も、そのような動きがあるのは知っていましたが、名前として認知したのは最近です。
去年辺りから、じわじわとブームの予感がする、
禁じ手を駆使したアンダーグラウンドなムーヴメントと言えます。
 
バスタード(bastard)は、「illegitimate child」という意味もあるのですが、
慣用句として、「You bastard! (この野郎!)」がよく使われます。
バスタードポップと言った場合は、
「非合法ポップ」「まがい物ポップ」「ニセモノポップ」といった
日本語訳が近いと思います。
 
そのバスタードポップの手法の核となるのが
マッシュ・アップ(mash-up)またはマッシュ・アップス(mash-ups)とも呼ばれます。
本来は。ジャガイモなどをすりつぶす事で、
マッシュポテト(mashed potetoes)のマッシュです。
ここで、マッシュ・アップという場合、2種類の違う楽曲を合体させて、リミックスしちゃうことです。

http://allabout.co.jp/entertainment/technopop/subject/msubsub_series_technopop19.htm
『ポップ裏街道』 - [テクノポップ]All About

 
 この『ポップ裏街道』の連載ではマイヤヒー(O-ZONEの『恋のマイアヒ』)や
最近のマドンナの新アルバムなども取りあげられています。
http://allabout.co.jp/entertainment/technopop/closeup/CU20050822A/index2.htm
 
 ぶっちゃけて言うと、音楽でのmash-upは、ノリとしては
マッドテープやマッドビデオや、hack(例:炊飯器でおいしいパンケーキを作る)に近い、
著作権や利用許諾や「適切な使用方法」などから考えると
ほぼ確実にアウトな部分から発生しています。
元材料・楽曲の権利保有者から訴えられたり警告をくらうと、
即公開停止になる危うさを持ってました。
http://allabout.co.jp/entertainment/technopop/closeup/CU20031105/
 
しかし、最近では一部のコンテストなどで、大手のレーベルが
「素材」の利用を"許可"している例外的ケースがあったり、
最近ではレーベル側がマッシュアップを宣伝のために
「仕掛けてくる」ケースも出てきました。
http://www.mtvjapan.com/special/mashup_top.html
こういうの、昔は「コラボレーション」とか言ってたんですけどね。
 
 

 「デビッド・ボウイのコンテストに関して1つ注意しておかなければならないのは、
ボウイが『私の曲のさまざまな部分を使ってもいい』と言っている点だ。
『私の曲』というのは、自分が著作権を持っている曲、という意味にほかならない。
しかも、コンテストの参加者が作成した作品についても、
ボウイが著作権を持つと主張している。
つまり、楽曲を自由にリミックスしてできるように
開放しているわけではないということだ。
『君もこのコンテストで何かが作れる。できたものはわれわれが所有する』
と言っているにすぎない。
これは、DJやマッシュアップを作っている人たちとはまったく異なる考え方だ」
とレビル氏。
 
 一方で、レビル氏はボウイのコンテストを
必ずしも悪いものだと思ってはいないとして、以下のように述べている。
 
 「連中は人目を惹きたいだけなのだから、そう目くじらを立てる気もない。
流行に乗って、これを何とか利用しようと考えている。
ただ、これがきっかけで多くの人たちが
マッシュアップがどんなものかを知るのはいいことだ。
だがそれはあくまで二次的な効用にすぎない」
 
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20040604204.html
ネットで普及する音楽「マッシュアップ」は著作権の常識を変えるか:HotWiredJapan

 
 今のところ、googleがやろうとしていることが、
バスタードポップのような面白すぎる悪ノリの方なのか、
デビッド・ボウイのコンテストのノリなのかはよくわかりません。


 けど、そもそも、そういった問い自体が意味をなさないのかもしれません。
音楽のコンテンツ自体が好き嫌いの要素を内包していて、
圏外からのひとこと」の記事で書かれているような、データベース的な
"無色透明なもの"*1ではないからです。 
 


データベース的な汎用サービスというのはこの図の下の
「単一のアーキテクチャ層」に属していて(そう受け取られる傾向があって)、
無色透明なものです。
無色透明なものだけに、好きになったり嫌いになったりすることが難しい。
Googleがこれだけ話題になっているのに
(手前一人が騒いでいるだけだという意見もあるでしょうが)、
Googleが大好きな人も大嫌いな人もそれほどいません。
 
これは、水道やコンセントが好きな人やその反対がいないのと同じで、
私たちは、自分たちの世界全体を支える「単一のアーキテクチャ層」を
好きになったり嫌いになったりすることが難しいのです。
 
マッシュアップは、その無色透明な「アーキテクチャ層」に
「コミュニティ層」の顔を与える。
それはローカルな文脈に合わせて情報を絞りこむという側面もありますが、
それより、自分が好きになったり嫌いになったりする、
もっと言えば「帰属」することができるようになる為の、
顔を与えてくれるのだと思います。

http://amrita.s14.xrea.com/d/?date=20060123#p02

 
 googleが「地図」、それも衛星写真だけというコンテンツ内容を
新しいサービスのシンボルとして選んだのには、
サービス提供側の技術的な理由以外にも、おそらくいろいろな「哲学」があって、
例えばgoogleの公正性や公益性イメージなどを打ち出す上でも
相当な宣伝効果を狙っていたんじゃないかなぁ…と。
 
 地図サービス上では、google八分効果を作るように圧力を受けても、
google側がその圧力を跳ね返すことは「地図」故にそこそこ容易だろうし。
そもそも、google側は「地図」周辺の"野良アプリ"には責任を持たないで済む。
 

*1:これ、essaさんも気持ち含みを持たせていますが、わたしは"無色透明"だとは思いません。まず、データベースの仕様書設計段階でかなりの色が付くような気はします。利用者にとって、無色透明に"感じられる"チューニングが求められて、それが行われているというのが適切かも。